負けを知らない人生
「血の降る至高の居酒屋にいった」後編はまた後日。
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15年近く追っかけているバーテンがいる。
“追っかけている”というのは、彼が店を転々としているからだ。
数千万単位の借金を抱えた根っからの苦労人で、口数は少ないが舌鋒きわめて鋭く、針のような言葉を吐くものだから時々ドキリとさせられる。
映画と本に造詣が深いので、ともかく会話が面白い。あともっとも重要なことだが、彼の作る酒はうまいのです。
で、そのバーテンが店をやめるんだそうで。
その理由が店のオーナーが「負けを知らない人生送っているから」と。
発言がかみ合わないんだそうだ。良いと思って口にする言葉を悪く取られ、その逆もまたしかり。
と、分かるようでさっぱり分からぬわけで、煩悶を抱えたままバーの扉を後にしたのだけれども、先日、唐突にその謎が解けた。
前回、書いたブログである。
税理士が節税を呼びかけているという話。もちろんその税理士は節税が目的ではなく、寄付金控除を知らない事業者に「制度を使ってもっとたんまり寄付しやがれ」と促してるんである。
その話を事業者仲間に話したところ、帰ってきた返事が
「(その税理士)最低だな」
であった。
咄嗟に出た言葉だったけれども、身の回りの“負けを知らない”“良識派”に同様の反応をする人間が多くてビックリするのだ。行き着く先や真意を読み取れない。ダリはファシストだから作品はどことなく暴力的で美しくない。モーツァルトはスカトロ好きだから『ジュピター』はうんこ臭くてクソ曲であると言っているのと同様じゃないか。
作品と人格は別個のものだし、被災者を支援するという“結果”に“経緯”は関係ないと思うのでありますよ。
こういう良識的な反応をするのが友人であったら何も問題はないのだけれども、自分の一生を捧げる店のオーナーの考え方だったら、なるほど意見がかみ合うはずもなくやっていけないだろうな、と。
最後に唐突に出現するマザー・テレサの発言。ある種の方々にとっては痛い言葉だと思うのでありますよ。
残り物を与えるのは、貧しい人々が持っている尊厳に敬愛を払っている行為ではありません。
彼らを見下げた行為としか言いようがありません。
*
持ち物が少なければ少ない程、多くを与えることができます。
矛盾としか見えないことでしょう。でもこれが愛の論理なのです。
*
より少なく持てば、その分、より多く与えられるのです。
より多く持とうとすれば、より少なく与えることしかできません。
*
人間にとって最も大切なのは、人間としての尊厳を持つことです。
パンがなくて飢えるより、心や愛の飢えのほうが重病です。
豊かな日本にも貧しい人はいると思いますが、それに気づいていない人もいるでしょう。
*
日本では、人々は何不自由なく生きているように思えるけれども、心の飢えをもっている人が沢山いるでしょう。
誰からも愛されていないという心の貧しさ、それは一切れのパンに飢えているよりももっとひどい貧しさじゃないかと。もっと親と話したいと思っている子供が、住んでいる部屋のナンバーでしか存在していない人が……。一人暮しの老人が死後何日もたってから発見されたり、隣に住んでいる人が病気なのに名前も知らなかったり。
私はそういう貧しい人に仕える為に、いつでもどこにでも飛んでいきつづけるつもりです。
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2011年03月23日 雑文 トラックバック:0 コメント:6
某漫画家だったり、某税理士が「節税のために義援金を送ろうやないか」と、ネットで公言しているようである。
勇気ある発言じゃないか。
純粋な善意による寄付金も、節税対策による寄付金も、被災者にとっては何も変わりない。確定申告を終えたばかりの時期だから、「よっしゃ、税金に取られるぐらいならば、寄付金を払っちまおう」という世間的に見れば“不届きな事業主”もいるだろう。おれがそうだ。
ニュージランドの声明にやられた。
ニュージーランドのキー首相は12日、津波などで甚大な被害が出ている東日本大震災について哀悼の意を示し、「私たちの惨事に対し日本は多大な支援をしてくれた。友人である日本国民のために、今度は私たちが必要なあらゆる支援を提供する用意がある」と強調した。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110312/asi11031211480003-n1.htm
アフガンのカンダハル市もひどい。
アフガニスタン南部カンダハルのハミディ市長は東日本大震災に対する義援金として5万ドル(約400万円)を送ると表明した。ロイター通信が13日報じた。
ハミディ市長は「日本のような国にとっては大したお金でないことは分かっているが、カンダハルの住民の感謝の印だ」と述べた。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110314/dst11031400390010-n1.htm
その他、約70カ国から支援の申し出が届き、十数カ国の救助隊がすでに来日しているという。これらは国家間のやり取りであるし、これまでODAを散々ばらまいてきたお返しの意味合いも強いわけだろうけど、今回は利権者層だけに届くわけでもなく、日本国民への支援へと結びつくことから根本的な意義が全く違う。
今まで散々、貧困国を回って、宗教観が違うから、あるいは国民性が違うからと、“持ってる人間”は“持たない人間”に手を差し伸べるのだ、などと偉そうに言ってきたが、そんな理屈もぶっ飛ぶぐらいあらゆる国から支援が来ているのですな。見返りだのなんだのという邪推も消える次第であります。
というかなんだ畜生。最近まで、同じ言葉を話し、同じメシ食って、同じ音楽聞いて、同じ映画を見てた人間が、ある日突然、全部失っちゃったんである。こっちは電力規制も節電もなく、ガス・水道も使え、食いたい時にメシ食って、酒飲んで、温かい風呂入って、フカフカの布団で寝てるんである。
海外での貧困者層の多くと、被災者との違いは、それが「耐えられる日常か」「耐えようもない日常か」だ。一部の貧困者層しか見てないままに言う暴論だけど、こう考えてしまうと何も感じないのはウソである。
生まれてこの方、募金なんぞしたことないから、色々と募金団体について調べていたのだけれども、東北地震の募金を募集している企業の殆どは『日本赤十字社』に渡すようのですな。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震においても災害救護や、医療チームの派遣、献血の供給などを行い、皇后が名誉総裁についてる団体である。どうせ訳の分からん企業や偽善者を経由するぐらいなら、初めっから『日本赤十字社』に募金した方がいい。
義援金が届くまでの手間や経費もバカにならぬし、1日でも早く役立てるように、こちらに入れちゃいましょうや。
【日本赤十字社/東北関東大震災義捐金について】
http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00002069.html
■郵便局・ゆうちょ銀行
口座記号番号 00140-8-507
口座加入者名 日本赤十字社 東北関東大震災義援金
■クレジットカード・コンビニエンスストア・Pay-easy
https://www.0553.jp/jrc/payment
2011年03月15日 雑文 トラックバック:0 コメント:-
血の降る至高の居酒屋にいった
久しぶりの更新です。
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某年。晩夏。
長崎に至高の居酒屋があることを知り、居ても立っても居られず家を飛び出した。車で2時間ほどの距離である。こういう時は食い物命かつ下戸で車持ちのI氏の存在が有り難い。
記録的な猛暑、だそうだ。近畿では連日38度の最高気温に達し、西日本各地では観測史上まれに見る高温記録を出していた。アスファルトは燃え出さんばかりに熱く、履いていた雪駄が溶けた。100円ショップで300円のサンダルを買った。
かくして現場についたものの、まったく店らしきものがない。
“分かりにくい場所にある”とは、知っていたので、事前に住所を書き留めて置いたのだけれども、居酒屋らしきものが全くないのだ。
街区はここらで間違いない。あとは末尾番号の差異である。川沿いの一本道なので、500メートル圏内の建物はすべて視野に入る。まさか住所の書き間違いをやらかしたかと憂患が生じたところで若いポリ公が目の前を通りがかった。
「居酒屋を探しておるんですが、知りません?」
「いや、そんな店名は聞いたことも見たこともないですねぇ」
「住所、この辺であってます?」
「うーん、確かにここの住所ですけど……」
その時、恐るべき予感が脳内を巡った。至高の居酒屋は兎にも角にも怪しい居酒屋なんである。規定概念を大いに打ち破る居酒屋なんである。無許可で経営している地下居酒屋である可能性だって否定できない。
ポリ公にしておくにはもったいないほどの穏和な警官であったが、思わず油断してしまうところであった。これがきっかけで国家組織の手入れが入ったらたまらんのである。嘘つきは警官の始まりだ。騙されてたまるか。おれは平静を装って、会話を切った。実に危ないところだった。
改めて自力で探す決意をしたところで、それは唐突に見つかった。
あった。見落としていたのだ。見落とすはずであった。





つづく。
2011年02月21日 紀行[国内] トラックバック:0 コメント:5
ペイント・イット・ブラック
自宅事務所にファックスを導入した。
実に今更の買い物である。清水義範が「これぞ文明利器の極み」と大絶賛していたのも、10年以上も前の話だ。今や、パソコンとスキャナーとEメールさえありゃあ充分なのである。そっちの方が綺麗だし、簡単だし、早いし、何しろタダときた。
とはいえ、俺の顧客は中小企業のおっちゃん・おばちゃん・オカマばかりなので、ファックスも時どき必要になる。と、ちゃんと購入理由を説明しとかないといけないのはどういう謂われか。実に理解しがたいことにおれが電化製品を買うと周りから説教を受けるのですよ。
端的に言えば、「身分不相応」なんだそうである。君は文明の利器なんか使っちゃいけない。豚に真珠、俺に文明という理不尽な面責なんである。
それにしても、新ジャンルの電化製品を入手すると心が躍る。手に入れた直後が一番たのしい。未知との遭遇である。あなたの知らない世界である。
いくら眺め続けたところで、ファックスが届くはずもないので、友人の閑古鳥カメラ屋店主Hにテスト送信して貰うことにした。
と、いきなり来た。そうか、ファックスを使い慣れているHは操作が早いのかと、妙な感心をしつつうろたえる。まさかこんなにも早く送られてくるとは思わなかったので、何の準備もしていなかったのだ。インクガアリマセン。ヨーシヲセットシテクダサイ。次々、ファックスから警告音が発生する。
まさかこのチャンスを逃したら、もう二度と受信できないのではあるまいか、という懸念にかられ、慌ててインクを押し込むようにセットし、手元の紙をむしり取って挿入する。
ファックスヲジュシンチューデス。おお、やったじゃないか。成功である。
が、ファックスから吐き出される紙を見た瞬間、心臓が凍り付いた。用紙の向きを反対にしていたのだ。先ほど、俺が咄嗟に差し込んだ紙は仕事に使う大事な原稿なんである。
慌てて送信中止ボタンを探すが、そんなものは見あたらない。そうか、電源を引っこ抜けばいいのか、という発想に至った頃には既に遅く、ははは、紙はとっくに排出された後でありました。
俺の原稿をこんなもんで塗り潰すとは、どういう了見だ、ハシグチ!
立体造形が魅せるHカップ美乳のダイナマイトボディ全身ダッチワイフ「ぬがせっ娘」。あなたに抱きつく立体実用ポーズの等身大ダッチで、リアルなフェイスマスクで雰囲気抜群。2,940円。(本文より)
2009年11月13日 雑文 トラックバック:0 コメント:0
裏ヤバ系プチ遠征
友人で仕事仲間で元へらへら隊のI氏が平日の夕方にとつぜん押し掛けてくるやいなや、開放感に満ちあふれた顔で言ったのだ。
「暇になった。泊まりでどっか遠くに行こうや」
おれがサラリーマンだったらI氏を殴っているところだ。お互いカネなし保証なし自由アリの自営業でよかった。
とはいえ、いきなり身元不明となるのはまずい。徹夜で二日分の仕事を行い、失踪準備を整える。遊びが掛かっているとなると、ここまで集中力が発揮できるものか。
今夏は遠征スケジュールが絶望的だった。ところがI氏が唐突にポッカリと予定が開いた。遠征と言うほど大がかりなものは無理にしろ、ふいに沸いた機会を逃すわけにはいかないのである。
スケジュールの関係もあったので、深夜、I氏の車で出発することにした。目的地は未定。
「ところで奥さんには何と言って出てきたん?」
I氏に問うと、
「ちょっと隊長の所に行ってくる、と。それだけ」
新婚1年目でこの調子なのであった。
目的地については10分間ほどの話し合いを行い、大分県の裏耶馬溪に決まった。何があるというわけでもなく、フィーリングである。名前がいいじゃないか。裏耶馬溪。つまり裏ヤバ系だ。
お互いパソコン電磁波にさられされっぱなしの生活なので、「裏ヤバ系でイッパツ抜こうじゃないか!」と投合しつつ、車で高速をひた走り、深夜の大分市に着。
なにせ急な出発であったので、いつも以上に情報がなかった。仮眠はどこでとるべきか。ネットカフェなんぞは言語道断である。風呂には一応入りたい。道中やたらとラブホテルを見かけ、6軒目のラブホテルを通りがかったところで、お互い口を開いた。
「ネットカフェに行くよりは……」
パソコンとは何としてでも離れたい、という強いな気持ちが、悲壮な決意を固めつつあったのだが、結局ぼくたちは(中略)。了。
▲むき出しのコンクリートにくたびれた椅子が非常に良い感じの耶馬溪・村上食堂。
定食は「からあげ定食」のみという非常に硬派な店でしたぞ
▲からあげ定食700円。皮に染みこんだニンニク醤油が香ばしい。
食べ歩きする予定が、これだけで腹が膨れてしまい残念
▲耶馬渓谷。天然露天風呂にてこの景観を見ながら、満喫……
のつもりが、I氏が目の前に立ち尽くしたため、せっかくの風景がI氏のキンタマで台無し
2009年08月19日 紀行[国内] トラックバック:0 コメント:2