近々、自衛隊がネパールに派遣されることとなった。
昨年末にネパール政府はテロリストと和平協定を結んだ。今回の自衛隊の任務はその協定履行の検証である。
これは以前のブログ記事でも触れたのだけれども、おれがネパール入りを目指していた頃に暴れまわっていたのがこのテロリスト『マオイスト』だった。
恥ずかしながらマオイストの存在を知ったのは、この時が初めてだった。当時、おれはネパールにほど近い貧乏宿に宿泊していており、旅行者は口々にマオイストについて語っていたのだ。いわく、
国境を越えるバスが襲撃された。旅行者向けのバスは全部止まっている。何人は無事に帰ってきたらしい。
情報は乱れていた。それも今となっては納得できる。
ちなみに和平協定後、日本政府が出した声明は次のようなものだ。
ネパール王国において、マオイストがネパール政府との和平交渉および停戦合意を終了する旨発表したことは遺憾であり、わが国は、マオイストに対し、停戦合意を引き続き遵守するとともに、和平交渉の再開に応じるよう求める。
また、わが国は、全ての関係者に対し、ネパール国民の福祉のために、民主主義の原則に基づき、平和的解決に向け緊密に協力し合うよう呼びかける。
まぁ、いわゆる普通の声明文である。マオイストに屈したネパールはダメダメ。でも、ネパール国民の平和のためだ。今後はよりいっそう協力するよ。と言っておるのだ。もっともらしい。

と、ここで「この世に絶対悪は存在しない」という考えを前提にするならば、果たしてマオイストはテロリストか、という問題を投げかけてみよう。
当然、日本は「テロ」と見なしている。外務省からの発行文書を見れば分かる。マオイスト=共産主義過激派組織=テロリスト。そうなっているのだ。
ところで、マオイストは過激武装テロリスト集団である、という情報を垂れ流しにしているのはアメリカだ。日本の政府もマスコミも、その情報を受けて、そのまま垂れ流す。
つまるところ、政府や国民、正義か悪か、といった概念はないのだ。アメリカが言ってるから何はさておき「正しい」のである。
***
さて、ネパール入りしたおれはどうなったのか。今、生きているということは、何事もなく無事に帰ってきたということなのだけれども、ネパール入りしてたびたび驚かされたことがある。
国民の誰もがテロリストを支持していたのだ。国民の誰もが、というと語弊があるので言い直す。おれが出会った国民の誰もがテロリストを支持していたのである。
これで情報が錯綜していた理由が分かった。飛び交うニュースの内容と実際の現地の様子がまったく異なっているのだ。
空気は確かに緊迫していた。ただの緊迫の理由は、マオイストの襲撃を恐れているのではなく、政府とマオイストの交戦を恐れた上での緊迫だった。
それからおれが出会った人間は低所得者層ばかりである。上流階級層と会うことが出来たら、また違った反応は見れたはずだ。
マオイストは毛沢東思想主義の信奉者をさす。乱暴に言えば、平等主義、アンチ・インテリである。個人の利益よりも公共の福祉を優先する。時に暴力をも辞さない。
統計法にもよるが、ネパールは世界で4番目に貧しい国とされている。
そしておれがネパール入りをする前年に、国王と皇太子が殺された。真相は未だ闇のままにあるのだが、国民の多くは国王の弟が絡んだ事件だと疑っている。これにもそれなりの理由があるのだけれど、ここでは割愛。現国王は、その国王の弟となった。
前国王に比べると支持率は大変に低くて、国は荒れる一方でよりいっそう貧しくなった。一方、富裕層はより豊かになったという話しである。
絶望的な状況から改革を起こすには暴力しか残されていないのは、歴史を見れば分かる。マオイストの標的は、富裕層と政府であった。マオイストの構成員は貧しい農村の女子供もたくさんいたりする。
これだけの材料を基にするならば、日本の声明文はこういっていることと同じだ。
わが国は、国民に憎まれている国王のために、私腹を肥やしている富裕層のために、アメリカのために、緊密に協力する。苦しんでる低所得者層?なにそれ、食べれるの? おれはネパールの国民でもないので、マオイストが正しいとか正しくないとかは断定できない。第一、勉強不足である。
ただアメリカのやっていることはおかしい。それに追従する日本もおかしい。これは断定できる。
ネパールに行ってからはますます日本のジャーナリズムが嫌いになった。マスコミの情報も全てが真実ではない。信用しちゃいけない。
と、この流れだと「報道ニュースよりも小生の日記を信用しろ」という支離滅裂な事態に陥るのでいちおう言っておこう。俺の書く内容も信用しちゃいけない。
スポンサーサイト
2007年01月26日 雑文 トラックバック:0 コメント:0